◆糸芭蕉と芭蕉布◆

 沖縄のこころを受け継ぐ伝統織物「芭蕉布」は、糸芭蕉の繊維を織り、草木染めの糸で綾なします。 糸芭蕉は、自然の恵みである土と水と太陽から育くまれていきます。

 芭蕉布は、琉球尚王朝の初期には既に織られていたようで、五百年以上の歴史があるといいます。
 風通しがよいことで夏の衣服として重宝され、身分を問わず、琉球弧の人々に愛用されてきました。
 以前はたいていの家に機が置かれ、それぞれの畑で糸芭蕉が大きな葉を揺らしていたものです。

 派手さはありませんが、生成りの自然な色合いと、草木染めの控え目な模様が芭蕉布の特徴です。また、芭蕉布製品を手にされた方は、さらっとした手触りにお気づきでしょう。

 糸芭蕉の原木から布として完成するまで数々の工程がありますが、それぞれの工程において、南国の暮らしの知恵と感覚が凝縮されているように思います。それらの多くの手法が、現代に継承されてきました。

 植え付けから3年を経て初めて繊維が採れるという、気の長い織物です。「こもれび工房」の場合、畑を切り開く段階から携わっています。さすがに、このときばかりは機械のお世話になりましたが、植えつけから後の作業は全部手作業でおこなっています。手作業ということには、こだわりが有ります。

 織物作業のイメージを小ぎれいにとらえると、芭蕉布の場合は当てはまりません。「織る」工程は全体の中では一部でしかなく、畑作業がかなりの割合をしめます。 炎天下の作業は汗だくになり、一時的なダイエットになるとしても、かなり厳しいものがあります。

 成長した糸芭蕉は、葉の部分も含めると3メートルほどの高さになり、手入れを怠ると、畑の中はジャングル状態です。周りが見えないので方向感覚も失い、不安に駆られることがあります。そんなとき、葉と葉の隙間から洩れてくる陽の光の美しさに、はっとすることがあります。森の中の木洩れ日のようで、ほっとさせられ、息を深く吐き出しています。

 ゆっくりゆっくり、自然の営みとともに過ごせるようにしたいと思っています。

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